2011/11/05 (Sat) 荒野、吹くものは(前篇)

どんどん打つ！
続いてユリン９月イベ！
追記から!!

「…ふぅ」

Φからの案内を見ていて、ハルはため息をついた。
今回は、一対一。
しかも、戦わずに勝ちぬくことは不可能なルール。
…少しルールがシビアになったと感じるのは、シュトラル学園の生徒会長が消されたことと、何か関係があるんだろうか。

「今まで戦わずに来たけど…今回ばかりは仕方ないな…」

もう一度深くため息をつき、行こう、と言って立ち上がるハルを追って、地下鉄へ。

……『三の黄昏』。
聞いてはいたけど、ひどい砂嵐だ。
コートとゴーグルは必須だと思ったハルが用意しておいてくれて助かった。

「…参ったな…ここまで野生ポケモンも多いと消耗が激しい…ユリン、大丈夫かい？」

「うん、何とかね…けど、砂嵐痛いし、目的の駅とやらに早く着きたいな…」

正直、こんな視界の悪い所じゃ攻撃が当たりにくい相手もいるだろうし、おかげで魔力の消費も激しい。
今対戦相手に襲われたら、不利なのは明らかだろうけど…これ以上消耗するよりはましだ。

……………

「…ついたみたいだね…もう、先客もいるみたいだ」

せめて相手がたどり着けずに脱落してくれることを望んでたけど、そうもいかないみたいだ。
ガラの悪そうな大柄の男と、ボクと同じ、妖精。
…けど、ビヒヨラの妖精ではないみたいだ。

「何だ、ただの優男と豆みたいなガキじゃねぇか…ルド、とっとと片付けるぞ」

自分もその『豆みたいなガキ』を連れてる癖に、言ってくれる。
うっかり挑発に乗りそうになったけど、ハルに制止されてぐっとこらえた。
ボク達より軽装なところを見ると、砂嵐には強いみたいだし、ヘタに動けない。

「レシオン、あたしだって小さいんだけど？まぁいっか、こいつら倒さないとあんたの願いはかなわないんでしょ？」

そう言うと、先に妖精の方が突っ込んできつつ、周囲に岩の粒を撒く。
これじゃ、余計に動けない。
ハルもナイフで岩をたたき落としながら何とか相手を気絶させる機会を伺ってるらしいけど、それも上手くいかない。
…加えて相手の召喚士は武闘派らしく、一緒になって突っ込んでくるからタチが悪い。
正直、魔力も底を尽きかけてるし辛い。
…けど。

相手の放った攻撃がハルに直撃しそうになったとき、ボクの体は自然に動いていた。

「ハルッ!!!!!」

瞬間、周囲が緑色に染まる。
ありったけの魔力を使って、周囲の自然を取り込んだ。
その自然の力を得た影響で、ボク自身の体も一時的にだけど成長した。

「ハルを脱落なんて…絶対にっ……させない…させてっ…たまるかあああああああっ!!!!!」

絶叫とともに、周囲に緑の嵐が吹き荒れる。

「ユリンッ!!!!」

どうやら相手には効果抜群だったらしく、相手はそのまま吹っ飛んで行った。
そして、ボク自身も、そのまま元の体に戻って、ハルの掌にすっぽりと収まった。

「…よかった、ハル…無事だった…勝った、んだよ、ね…？」

ハルは怒ったような、辛そうな、何ともいえない表情をしていて。
その表情の意味を知る前に、ボクの意識は途切れた。




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