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………星祭りの3日間が終わろうとしている。
バタバタと忙しい3日間ではあったが、時々なら、こういった状況も悪くはない。
…ネルイルーアに帰るというガウラを途中で乗せ、リサーラはまた空の旅へ出る。
………そんな日常の暗転は、一瞬のうちに起こった。
祭りが終わったというのに、眼下がやけに…眩しいほどに明るい。
不審に思って王都を見下ろせば、広がるのは火の海。
「(…どういう、ことだ……)」
「ぬー」
…先刻、オアシスで保護したベルカは、ほどなくヌオーになった。
そんなベルカが、どうも元気がない。
「…どうした」
「…ぬー…」
…ベルカは、口をあけてみずでっぽうをだす構えを見せるが、一向に一滴の水も出る様子がない。
俺自身も…うまくナイフに魔力がこもらない。
羽根に力も入らず、飛行能力すら失ったかのようだった。
…どうやら、それは乗っている宿泊客も同じだったようで、リサーラの内部は混乱を極めた。
「シン君!」
女将に呼ばれ、これからの動きを説明される。
まず、リサーラにあるありったけの水を集め、ヴァハルの広場へ向かう。
そして、その水を使って王都に上がった火の手を消しにかかる…とのことだった。
俺たち従業員は、とりあえず宿泊客の混乱を鎮め、激しく揺れることに対して注意を喚起するよう促された。
「…了解した…いくぞ、マーシャ、リンディー」
3人で手分けして、宿泊客の誘導にかかっていたところへ。
「シンちゃん!」
…この忙しい時にこいつは…。
後にしてくれ、と言うと、そのすぐあとガウラが何か言おうとしたが、女将の館内へのアナウンスにかき消された。
「えっ何?これからどうなんの?」
情報開示を求めるガウラに、女将から説明のあった今後の動きを軽く説明した。
…そうこうしているうちにリサーラはヴァハル広場へ到着した。
「……マジで洒落になんないじゃん…」
「…わかりきっていることを言うな」
既に火の手は相当の範囲に上がっており、このまま放っておいたら…おそらく王都は壊滅する。
わざの使えない今、俺たちに出来ることは、とにかくこの水や魔道具を使って消火活動をすることのみ。
広場に集まった人たちも桶を取り、水汲みを手伝ってくれている。
だとすれば…俺にできることは。
「(…館内の混乱の収束か…)」
この状況を見て、気分が悪くなった宿泊客もいたらしい。
リサーラの従業員が少ない以上、俺はこちらを優先すべきだろう。
「…シンちゃん、今僕にできてシンちゃんにできないことって何だと思う?」
そう声をかけてきた友人は、俺の答えを予測済みのようだった。
館内の混乱を抑えるために、ここを動けない旨を伝えると、ガウラは大きく胸を叩いた。
「りょーかい!シンちゃんの分まで働いてくるから、そっちは任せたよ!」
……外に出て負傷者の保護をしてくれるとは言うものの、スワイリフの連中も相当数動いているようだ。
奴に限って大丈夫だとは思うが…わざが使えない以上、ほぼ丸腰も同然だろう。
「持っていけ。何かに使えるかもしれん」
持っているナイフを一振り、ガウラに手渡した。
こいつの得意な遠距離攻撃ではないが…ないよりはましだろう。
「サンキュ☆ありがたく使わせてもらうね!」
「あくまで貸すだけだ…事態が収束したらすぐ返しに来い」
…普段のとおりの態度で、ひらひらと手を振りながら炎の燃え盛る市街へ出るガウラを見送る。
あいつなら無事だとは思うが…せめて、無事くらいは祈っておいてやろうと思う。
俺は俺に、奴は奴に、それぞれができることを。
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